【よみました】「これからの日本、これからの教育」前川喜平&寺脇研(対談)[筑摩新書]

 最近は【読書メーター】のまとめ記録をアップするばかりでした。
 んでもって、久し振りの普通の投稿も読書記録。
 筑摩書房(筑摩新書1288)「これからの日本、これからの教育」(前川喜平、寺脇研)を読みました。

 元文部科学省(旧文部省)官僚のお2人の対談。
 筑摩書房さんてば、よくぞこんな本を出版してくださいました。言論の自由が守られている感じです。

 教育や教育行政に関わる方の必読書としてあげたいです。

 前川喜平氏の「再就職斡旋問題の引責辞任」や「加計学園の話題」についても触れられています。
 これらのことについては、当事者の一方の言い分ではありますが、そういう前提で読めば、反前川の方も納得して読めると思います。
 そもそも、ものごとには色々な視点がある/多様性を認めるということが本書に通底している主張と捉えていますので、親前川の方も「前川氏の言い分である」という前提で読み込むとよいと思います。
 また、実名を挙げられて批判を受けている方もありますが、それも前川氏・寺脇氏の見方ということを念頭に置いて読むべきで、例え共感する部分が多くあったとしても鵜呑みにするべきではないと考えます。

 前川氏の「言い訳」とも受け止められてしまう部分以外については、教育や教育行政に関わる方の心に一様に響くのではないでしょうか。なお、教育に関わる方というのは、学校の教職員や塾をはじめとする教育産業関係者ばかりでなく、家庭教育・社会教育なども含めての教育に関わる方というつもりで言っております。ようするに、ほとんど全ての方を指しているつもりですので念のため。

p.11「教育は営利事業ではない」
 「教育は、短期間で成果が上がるような営利事業ではないし、そのことを目指すべきでもない」(p.12)にも関わらず、色々なところで短期的な成果を求められているような気がします。p.77には「教育は20年」とも。
 p.52の「農業高校はいらない!?」にも長期的な視点の必要性が訴えられています。
 p.72の総合学科のくだりに書かれた「青の洞門」の話も心に染みます。

p.15「いくつかの出会い」
 素敵な上司との出会いがあったことがわかります。
 私たちの生き方を決めるのは、他者との出会いかも知れません。私自身が、他者に影響を与えている可能性を自覚して生きたいと考えさせられました。

p.31「命がけの文部官僚」
 初代文部大臣の森有礼(p.26)、文部次官経験者で私の母校初代総長の澤柳政太郎(p.29)、本書で初めてお名前を聞いた劔木 亨弘(文部事務次官→官房副長官→参議院議員→文部大臣,p31)、文部官僚ではないけれど坂本添田町教育長(p.40)、学制改革の中心となったと(本書では)されている日高第四郎(p.106)、私の郷土の誉れにして母校の先輩で遠縁に当たる(としている)義務教育費国庫負担制度の(再?)構築をし、文部大臣をも務めた内藤誉三郎(p.242)などなど。先人の取組を知って、どんな思いで教育・教育行政に当たるべきかを考えさせられる。

p.60「業者テストの追放」
 埼玉県が余計なことをしたから、大変上手くいっていた神奈川方式が潰され、神奈川では公立高校第一志望であるほとんど全ての中3生が私立学校を併願しなければならなくなったと、正直なところ今でも思っています。
 しかし、高校全入であるとか、高等学校の無償化、さらには高等学校の義務教育化までを視野に入れると、入学者選抜自体がおかしい者のように感じられます。
 今すぐに実現することではないのは承知していますが、各高校等がそれぞれ特色を持ち、入学を希望する子ども達が皆希望どおりに進学できるような社会を思い浮かべるとワクワクします。
 生涯学習もそういった思想の一部分をなしていると思います。中学を卒業したらすぐに進学しなくてもいいという価値観を共有できたらステキではないでしょうか。高校卒業後にすぐに進学せず、一旦社会に出てから大学に入学する方も、もっともっと増えてきそうです。
 キャリアパスという言い方であったいるかどうかわかりませんが、そういったものの多様性が認められる社会がいいと思います。

p.132「朝鮮学校の無償化について」
 「コリア国際学園」(p.135)、「在日というアイデンティティ」(p.141)、「朝鮮籍」(p.141)など、知らないこと・気付いていないことが沢山ありました。

結局のところ
 私たちはどんな社会に暮らしたいのか、次の世代にどのような社会・環境を手渡したいのか。そんなことを考えて日々の仕事に当たりたいと思った。住みやすい人の世を創りたいな。
 「人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣ににちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」(夏目漱石「草枕」,青空文庫より)

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by N-_-10 | 2017-12-23 11:28 | 学校教育


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